がん検診で問題となるのが、胸部エックス線撮影などの検査によって放射線に被曝してしまい、がんを早期発見するはずが、かえってがんを発症するリスク要因になってしまうのではないかということです。福島原発事故でも名前だけは有名になりましたが、人体への影響を考慮した放射線の被曝量の単位として、シーベルトというものが用いられています。人間は宇宙や大地からもわずかながら放射線の被曝を受けており、世界平均としてこうした自然放射線による被曝は年間2.4ミリシーベルト程度になります。ブラジルの一部のように自然放射線の量が特に高い地域では、年間20ミリシーベルト程度に達することもあるといいます。
通常の人が自然放射線のほかに年間に受けてもよい放射線被曝の量については、年間1ミリシーベルトまでが一応の目安とされており、疫学的には年間100ミリシーベルト以下であれば、発がんリスクに統計的に有意な水準での差は認められないとされています。がん検診の際の胸部レントゲン検査での1回あたりの被曝量は、0.05ミリシーベルト程度といわれており、同じ検査を年に何度も受けなければ、特に問題のない水準にとどまっています。同じがん検診であっても、胸部CTスキャンになると、この被曝量がかなり増加し、1回で受ける線量は6.9ミリシーベルト程度になるといいますので、検査でがんなどの病気が発見できるメリットがリスクを上回る場合について行うというのが原則です。